「今日は合計50pips稼いだ」「先月は200pips損した」などのトレーダーのコメントを見ても、それがいくらなのかイメージできないという方も多いのではないでしょうか。
pips(ピップス)は、FX取引で使われる価格変動の最小単位です。
本記事では、pips(ピップス)の概念や計算方法、pipsを利用するメリットや注意点について解説します。
pips(ピップス)とは?
pips(ピップス)は、FX取引で使われる価格変動の最小単位です。FX初心者の方にも分かりやすく説明すると、pipsは通貨ペアの価格がどれだけ動いたかを測る物差しのようなものです。
日本円を含まない通貨ペアでは、為替レートの小数点4桁目の変動が1ピップスとなります。例えば、ユーロ/米ドル(EUR/USD)の為替レートが1.2000から1.2001に変わったとすると、1ピップス上昇したということです。ただし、日本円を含む通貨ペアの場合は少し異なり、小数点2桁目の変動が1ピップスになります。
なお、ピップスは相対的な変動を表す便利な指標ですが、絶対的な金額を示すものではありません。
ポイントとの違い
pips(ピップス)とポイントは、どちらもFX取引で使用される価格変動の単位ですが、厳密には異なる概念です。
pipsは、日本円を含まない通貨ペアの場合は小数点4桁目(0.0001)の変動を表します。例えば、EUR/USDが1.2000から1.2001に変動した場合、これは1pipの変動となります。
一方、ポイントは通常、価格の最小変動単位を指します。1ポイントは1pipが同じ値を示すことも多いですが、必ずしも同じではありません。
特に、小数点5桁目まで表示する通貨ペアでは違いが明確になります。例えば、EUR/USDが1.20000から1.20010に変動した場合、この変動は1pipとなりますが、ポイントで表すと10ポイントの変動となります。
つまり、5桁表示の通貨ペアでは
1pip = 10ポイント
という関係になります。
FXの1pipsはいくら?
FXの1pipsはいくらなのか、以下のパターンで解説します。
- 日本円を含む通貨ペアの場合
- 日本円を含まない通貨ペアの場合
日本円を含む通貨ペアの場合
日本円を含む通貨ペアの場合、1pipsは為替レートの小数点2桁目の変動を指し、0.01の変動が1pipsとなります。USD/JPY(米ドル/日本円)で為替レートが110.00から110.01に変動すると、1pipsの変動となるということです。
1pipsの金銭的価値は、取引量によって変わります。標準的な1ロット(100,000単位)の取引では、USD/JPYの1pipsは約1,000円の価値があります。これは以下のように計算されます:
0.01(1pips)× 100,000(1ロット)= 1,000円
ただし、1ロットの大きさは利用しているブローカーや口座によって異なります。
なお、以下の表はは1pips=0.01円とした場合の例です。
1,000通貨 | 10,000通貨 | 100,000通貨 | |
---|---|---|---|
1pips | 1円 | 10円 | 100円 |
5pips | 5円 | 50円 | 500円 |
10pips | 10円 | 100円 | 1,000円 |
50pips | 50円 | 500円 | 5,000円 |
100pips | 100円 | 1,000円 | 10,000円 |
500pips | 500円 | 5,000円 | 50,000円 |
1,000pips | 1,000円 | 10,000円 | 100,000円 |
日本円を含まない通貨ペアの場合
日本円を含まない通貨ペアの場合、1pipsは為替レートの小数点4桁目の変動を指し、0.0001の変動が1pipsとなります。EUR/USD(ユーロ/米ドル)で為替レートが1.2000から1.2001に変動すると、1pipsの変動となるということです。
1pipsの金銭的価値は、取引量と当該通貨ペアの為替レートによって変わります。標準的な1ロット(100,000単位)の取引では、EUR/USDの1pipsは約10米ドルの価値があります。
0.0001(1pips)× 100,000(1ロット)= 10米ドル
ただし、この金額は為替レートによって変動します。例えば、EUR/USDのレートが1.2000の場合、1pipsの価値は10米ドルですが、レートが1.1000に下がると、1pipsの価値は約9.09米ドルになります。
FX取引でpipsが使われている理由
FX取引でpipsが広く使われている理由はとてもシンプルで、便利だからです。まず、pipsを使うと、違う通貨ペアの値動きを簡単に比較できます。ドル円が50pips動いたのか、ユーロドルが30pips動いたのか、すぐに分かります。
また、pipsを使うと、リスク管理がとても楽になります。「この取引では20pipsまでの損失なら許容できる」といった具合に、簡単にリスクの上限を決められます。これは、どの通貨ペアでも同じように使えるので、とても便利です。
取引の結果を振り返るときも、pipsは役立ちます。「今日は合計50pips稼いだ」「先月は200pips損した」など、成績を簡単に記録し、比較できます。
お金の金額で考えると感情的になりがちですが、pipsで考えると冷静に判断できます。「100ドル損した」より「10pips損した」の方が、感情的にならずに済むでしょう。
また、EA(自動売買システム)を作るときも、pipsは便利です。「20pips動いたら決済」といったルールを、どの通貨ペアにも同じように適用できるからです。
pipsを利用するメリット
pipsを利用するメリットは以下の通りです。
- 値幅を直感的に比較しやすい
- リスク管理の精度が上がる
- ポジションサイズをリスク許容度に基づいて設定できる
それぞれについて解説します。
値幅を直感的に比較しやすい
pipsを利用するメリットの一つは、異なる通貨ペア間の値動きを直感的に比較できることです。例えば、USD/JPYが100pips上昇し、EUR/USDが50pips下落したとしても、すぐにどちらの動きが大きいかを理解できます。これは、通貨ペアごとに異なる絶対的な価格水準を持つFX市場において非常に重要です。
pipsを使うことで、トレーダーは市場全体の動きを素早く把握できます。例えば、「今日はドル高で、主要通貨ペアが平均30pips動いた」といった情報も直観的に理解できます。複数の通貨ペアを同時に取引する場合に、特に便利です。
また、pipsは長期的なトレンドの強さを比較する際にも役立ちます。「先月、EUR/USDは500pips上昇し、GBP/USDは300pips上昇した」といった情報から、どの通貨ペアがより強い上昇トレンドにあるかを直感的に理解できます。
それ以外にも、pipsを使うことで異なる時間枠での値動きも比較しやすくなります。1時間足での100pipsの動きと日足での200pipsの動きを比較することで、市場のボラティリティの変化を把握しやすくなるでしょう。
リスク管理の精度が上がる
pipsを利用することで、FX取引におけるリスク管理の精度が大幅に向上します。pipsを使うと、異なる通貨ペアでも一貫したリスク管理が可能になります。例えば、「各取引で最大20pipsのリスクを取る」というルールを設定すれば、どの通貨ペアでも同じ基準でストップロスを設定できます。
また、pipsを使うことで、損益の計算も簡単になります。「今日は合計50pips利益が出た」といった具合に、日々の取引結果を簡単に分析することができるので、自分のトレードを客観的に評価できるでしょう。
さらに、pipsを使うことで、感情的なトレードを防ぐこともできます。金額ベースで損益を見ると必要以上に興奮したり落ち込んだりしがちですが、pipsで考えることで、より冷静な判断が可能になります。
ポジションサイズをリスク許容度に基づいて設定できる
pipsを利用することで、自分のリスク許容度に基づいた適切なポジションサイズを設定できるようになります。例えば、「1取引で総資金の1%以上をリスクにさらさない」というルールを設けている場合には、pipsを理解することで適切なポジションサイズを計算可能です。
ポジションサイズの計算方法
- ストップロスを何pipsに設定するかを決める
- 1pipsの金額を計算する
- リスク許容額を1pipの価値で割る
この方法を使えば、異なる通貨ペアや市場状況でも、一貫したリスク管理が可能になります。例えば、ボラティリティが高い時期には広めのストップロスを設定し、それに応じてポジションサイズを小さくするといった調整が容易になります。
pipsの注意点
pipsの注意点は以下の通りです。
- 通貨ペアごとに1pipsの価値が異なる
- レバレッジの影響を過小評価しがちになる
- 異なる口座通貨での比較が難しい
- チャート上のパターンとpips数が一致しない場合もある
それぞれについて解説します。
通貨ペアごとに1pipsの価値が異なる
pipsを使用する際の最初の注意点としては、通貨ペアごとに1pipsの金銭的価値が異なることです。EUR/USDの1pipsとUSD/JPYの1pipsでは、実際の金額が異なります。
価値が異なる理由としては2点あり、1つは為替レートの違いです。USD/JPYが100円台で取引されている場合、1pipsは約1円の価値がありますが、EUR/USDが1.2000付近で取引されている場合、1pipsは約0.1円の価値しかありません。
もう1つの要因は、通貨ペアの取引単位(ロットサイズ)です。基本的には1ロット100,000単位での取引を前提としていますが、実際の取引では異なるロットサイズとなることも珍しくありません。
この違いを理解せずにpipsだけで判断すると、実際のリスクや利益を誤って評価してしまうリスクがあるので注意してください。
レバレッジの影響を過小評価しがちになる
pipsを使用すると、レバレッジの影響を過小評価しがちになってしまいます。
具体的な例をあげて解説します。例えば、10pipsの損失は小さく感じるかもしれませんが、1:100のレバレッジを使用していれば、10pipsの変動が資金の10%に相当する可能性もあるのです。
また、pipsで考えることで、「小さな利益」を積み重ねようとする傾向が強まり、結果として過度にリスクを取ってしまう可能性があります。「1日10pips稼ぐ」という目標は控えめに見えるかもしれませんが、そのために大きなレバレッジを使用すれば、資金を大きく毀損するリスクが高まります。
異なる口座通貨での比較が難しい
pipsを使用する場合には、異なる口座通貨での比較が難しいというデメリットがあります。
例えば、USD建ての口座とEUR建ての口座で同じpips数の利益が出たとしても、実際の利益額は為替レートによって大きく異なるケースがあります。USD/JPYで100pips稼いだ場合、USD口座では約100ドルの利益になりますが、EUR口座ではその時点のEUR/USDレートによって利益額が変動します。
また、クロス通貨ペアの取引では、さらに複雑な計算が必要となります。例えば、EUR/JPYを取引する場合、USD口座ではUSD/JPYとEUR/USDの両方のレートが利益額に影響を与えることになるからです。
クロス通貨ペアの取引以外でも、スワップポイントの計算や取引コストの比較でも、異なる口座通貨間ではpipsだけで計算できません。
チャート上のパターンとpips数が一致しない場合もある
pipsを使用する際の注意点として、チャート上のパターンとpips数が必ずしも一致しない場合があることを理解しておく必要があります。これは主に、チャートの表示方法とpipsの計算方法の違いから生じます。
例えば、ローソク足チャートを使用している場合、各ローソク足の長さは価格の絶対的な変動を示していますが、これがpipsに対応するとは限りません。特に、長期間のチャートや、価格が大きく変動している期間のチャートでは、この差異が顕著になることもあります。
また、対数チャートを使用している場合は、同じpips数の変動でもチャート上では異なる長さで表示されることがあります。これは、対数チャートが価格の相対的な変化を示すためです。
テクニカル分析を行う際も、この点に注意が必要です。例えば、フィボナッチリトレースメントやトレンドラインなどのツールを使用する場合、チャート上の視覚とpips数が一致しないことがあります。
まとめ
本記事では、pips(ピップス)の概念や計算方法、pipsを利用するメリットや注意点について解説しました。
pipsは通貨ペアの価格がどれだけ動いたかを測る物差しのようなものです。
FXの1pipsは日本円を含む通貨ペアなのか、そうではないのかで変動幅が異なるため、本記事を何度も読んできちんと理解するようにしてください。